今回は、「サルコペニア」の見つけ方と、その予防方法についてお話いたします。
お話:右田 巳賀先生
サルコペニアの簡単な見つけ方
一番簡単にできる「指輪っかテスト」をご紹介します。
両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの最も太い部分を掴みます。
「囲めない場合」や「ちょうど囲める」のであれば、いいのですが、問題なのは、「隙間ができる」場合です。
これは、明らかに筋肉量が減っているということになります。
「お腹ばっかり出てきて、手足が細くなってきた。」とよく皆さんおっしゃられるのですが、
筋肉が減っているのではないかと、考えていただくとよいかと思います。
予防には、「運動」と「栄養」が大切
サルコペニアは、生活習慣の改善で十分予防が可能です。
予防は、「運動」と「栄養」が中心となります。
「栄養」に関しては、たんぱく質やアミノ酸が多く含まれる 肉や魚、大豆、牛乳などの摂取が重要になります。
65歳までの方は、肥満で糖尿病になったり、メタボリック症候群ということで体調を崩されるということを注意しないといけませんが、
65歳を過ぎると、無理な減量をしないで、その内容と質を考えていかれることが大事だと思います。
「年をとったら、粗食にする」と以前は言われていましたが、その考え方は改めたほうがよいかもしれません。
よく、100歳でお元気なご老人は、お肉を食べているという話を耳にしますが、一理あると思います。
たくぱく質をしっかり摂っていくということは、とても大事なことだからです。
85歳でヒマラヤに登頂された三浦雄一郎さん、あの方はかなりの大きさのステーキを召し上がっていましたね。
そこまではなくてもいいのですが(笑)、ある程度、お肉などもちゃんと食べていただきたいですね。
年を重ねると、同じたんぱく量を食べても、段々、筋肉になりにくくなるのです。
お肉というのは、脂肪さえ多くなければ、吸収して筋肉に再生しなおすときに、効率がとてもいい食べ物です。
そういった意味で、お肉は、脂質を多く摂らなければ、ある程度摂取してよいのではと思います。
お魚は、ビタミンDや血栓予防に効果があるいわれている油(EPA)が含まれていますので、しっかり摂っていただくとよいと思います。
たしかに、一人分を作るとなると、炭水化物が増えてしまって、ちゃんとお魚とかお肉とかを料理しないなぁっていうのは、わたしも感じます。
ですので、薄切りのお肉や切り身のお魚などのお料理しやすい食材を上手に使っていただければよいかなぁと思います。
加齢による「オーラルフレイユ」
英語で「オーラル」は『口腔の』、「フレイル」は『虚弱』を意味します。
噛めなくなると、野菜の摂取が減ります。
また、ゴマやビーナッツなどの種実類やお肉は「硬いから、食べない」といったことにもなっていきます。
食べられないものが増えてくると、食事のバランスが悪くなり、摂取する栄養に偏りが出てきます。
わたしも反省したのですが、先日、歯科を受診しました。
これまで、1日3回の歯磨き+デンタルフロスも使用していたので、きちんとケアできていると思っていました。
ところが、歯医者さんに行くと、やはり歯石が残っていました。
大人の虫歯というのは、歯石が残ったところから炎症を起こして、そこに歯肉ポケットというものが作られ、そこから発生していくのです。
歯石というのは、必ず誰でも取らないといけないものだそうです。
「別に歯は痛くないから、いいや」と思っていたのですが、それは大きな間違いだと気付かされました。
みなさんも、是非、歯科の先生のところには、定期的にいらっしゃって、磨き残しがないかチェックしてもらい、歯石を取っていただくと良いと思います。
「万歩計」を活用しましょう!
「運動」に関しては、歩行などの有酸素運動が効果的です。
「サルコペニア」の予防には、中年期以降の運動習慣がとても重要になります。
わたしは、よく受診にこられた患者さんに「万歩計は持っていらっしゃいますか?」とお尋ねします。
「携帯についているから。」とおっしゃる方がいらっしゃるのですが、できれば『万歩計』が持っていただくのがよいかなと思います。
最近、機能が充実している「体活動量計」もいろいろと出ていています。
うちでも、使用しているスタッフがいます。
身体の動きを感知して、エネルギーの消費量などをいろいろな情報をお知らせしてくれます。
それはそれでとても良いのですが、機器によって精度の違いがあったりしますので、わたしは、万歩計をオススメしています。
1日中、首からぶら下げていただきたい。1日ぶら下げると、その日の活動がわかります。
オススメの1日あたりの歩数ですが
女性でしたら、7000歩 以上
男性でしたら、8000歩 以上
を目指して欲しいです。
これより少ないと、「じっとされていて、活動量が足りない」ということになります。
今年の5月の糖尿病学会でも話があったのですが、日本人の場合は、
【 肥えている=糖尿病 】とは限らないのです。
細くても、血糖が高い方がおられます。
アジア人は、すい臓が弱いので、ちょっとした肥満、ちょっとした運動不足で、血糖が上がります。食事の量も、糖尿病になる方が、そうでない方よりよほど沢山食べているかというと、トータルのカロリーは、そんなに変わらないのです。
ただ、食べる内容が違うということは言えます。優位に炭水化物の摂取量が多くて、野菜の摂取が少ない。ですから、歯の健康をしっかり保って、野菜の摂取量をとにかく増やすことが大事です。
それから、もう一つ、
「活動量が少ないと糖尿病になりやすい」、ということです。
活動量が少ない → フレイル・サルコペニアになりやすい → 糖尿病を発症しやすい
ですから、まず、簡単な取り掛かりとして、万歩計をつけて、動くことをオススメしています。
「今から1時間、歩くぞ!」なんてしなくても、細切れでもこまめに身体を動かすことにより、活動量を増やすことができます。
できれば、1日を通じて目標値を決めて、動くことを心がけましょう。
万歩計を見てみて「全然動いてなかったなぁ」という日は、今日はちょっと余分に、10分多めに、外を歩いてこよう!という感じで。
わたしの場合は、なかなかジムに通う時間がないので、家にあるランニングマシンで歩いたり走ったりしています。
人によって違いはありますが、大体、1歩が60~80cmくらいです。
普通に歩くと時速5.5kmくらい、早足だと時速6kmくらいなので、半分の30分だと3kmくらい歩いたことになります。
できれば、普通の速さと早足での歩行を1分おきくらいに交互に組み合わせたインターバル走法で歩かれるとよいのですが、
これがなかなか難しいので、
「 次の信号まで、早足で行こう 」
「 そこから、次の角までは、ゆっくり歩こう 」
みたいな感じで、速さに変化をつけるといいと思います。
こんな感じで、20分~30分くらいウォーキングをして、1日通して目標値(女性:7000歩、男性:8000歩)になるようにしていきましょう。
とにかく『身体をこまめに動かす』ということを心がけていただきたいと思います。