講師: 副院長 右田巳賀
糖尿病のある方は、血圧も高い方が、実はとても多いのです。高血圧症は、糖尿病と同じで、生活習によっても起こりますし、遺伝的なものが原因となることもあります。

そもそも高血圧とは?
収縮期血圧
心臓から流れ出した血液が大動脈の壁を押し広げた時の血圧

拡張期血圧
押し広げられた大動脈の壁が元の戻ろうとした時の血圧
血圧が高いとどんな影響があるの?
血管に負担がかかり硬くなってしまい、血液を送り出す心臓の負担が増えます。それによって心臓そのものがバテしまいます。不整脈が起きる場合もあります。また、腎臓は血管でできているため、血管が硬くなると腎臓の機能も落ちてしまいます。
血圧が高くなる機序は?
- 血管が硬くなって広がりにくくなる。
- 血流量が多くなりすぎる。
この原因には、経年的なもの、遺伝的素因などもありますが、塩分の多い食生活や肥満など、生活習慣によるものも挙げられます。
また、気温の差も血圧に影響を与えます。例えば入浴の前後や寒い時期などです。冬場になると緊張が強くなるため、秋口(だいたい11月頃)から収縮期血圧・拡張期血圧ともに、値が10くらい上昇する方も多くみられます。
血圧の正しい測り方
次は、血圧の管理方法についてご説明します。患者さんにご自宅で血圧を測ってくださいね、とお願いする時には、一番は、「患者さん自身の負担にならない程度に測ってください」とお話しています。
週1回でも2回でも、もちろん毎日測っていただけば一番いいのですが、それが苦痛で負担になって、測る度に血圧があがるんですよ、とおっしゃる患者さんもいらっしゃるので、まずは、苦にならない程度に測ってくださいねとお願いしています。
血圧を測るタイミングは、「起床後1時間以内」に、「排尿を済ませて」「朝食前に」がベストです。
特に女性でご飯やお弁当を作らなくてはいけないという方は、バタバタしてしまうかと思いますが、ご自身がお食事を摂られる前に測るといいと思います。
また、夜眠る前にも測ると、朝とは違った値が出ることがあります。出来れば、朝と晩に測っていただくと良いと思います。
患者さんの中には、毎回測るたびに値が違っていて、「これは、血圧計がおかしいんじゃないかねぇ?」といわれる方もおられるのですが、測定方法が違ったりする場合もあるので、測り方を確認させていただくこともあります。ですが、血圧計そのものは、最近はかなり性能がよくなっているので、「血圧計がおかしい」ということは、ほぼありません。ですので、ご自宅で測った血圧が本当に高いということもあります。
測定回数は、原則2回です。1回目・2回目と測って、その2回の中間の値が、ご本人の血圧と思われてください。
測定機器は、上腕で測るものが推奨されています。カフ(腕に巻くベルト)が心臓の高さにして測ります。日本人は右利きが多いので、機器は「左手」で測定するようになっています。
糖尿病患者さんは、家庭血圧の目標値は、125/75mmHgで、病気でない人の目標値135/85mmHgよりも厳しく、低めに設定されています。何故かというと、糖尿病+高血圧症があると動脈硬化が進行しやすいからです。1+1=2ではなく、それ以上になるということです。
注意していただきたいのは、少し年齢が高くなってこられますと、血圧の値を急激に下げることは、かえって負担になることがあるので、ゆっくり時間をかけて下げていくことが重要になります。
糖尿病があって血圧が高いという方は、ご自身でも気がつかない間に、脳の血管が詰まっていて、MRIやCTを撮ると小さな脳梗塞が、沢山見つかったということがあります。ご自身ではいつ脳梗塞が起こったか、自覚症状がないため気付かないのですが。こういった状態が進んでいくと、年齢より先に物忘れなどがひどくなってきて、いわゆる認知症が早く進むという症例もよく見受けられます。
糖尿病患者さんで、血圧の高い方は、早いうちに血圧のコントロールをしていくことがとても大事になります。
